霞の小太刀を操る名も無き悪漢:血笑鴉 第1巻:横山光輝:少年コミック

醜い姿ゆえに裏街道を歩む「名も無き主人公」。
彼は殺し屋として生き、記憶も失っていた。
その抜群の太刀筋ゆえに生きていくのは困らなかったが、救いのない人生を歩んでいた。

街道筋には鬼が住む
鬼の姿は醜い鴉
血に飢えて舞う一羽の鴉
鬼と出会ってしまったからにゃ
二度と娑婆には帰れない

見合う金(あるいは女性の肉体)すら貰えればどんな汚い仕事でも引き受ける主人公。
貰った金は全て賭博や女に費やすその日暮らし。時には恩を仇で返し、気が向けば見逃し、生き残るためには卑怯な手を使うのもためらわない。
人間と言うより動物に近い、その本性。ゆえに欲望には常に本能に忠実であり、人の感情の機微も理解出来ない。

【送料無料】血笑鴉(第1巻)

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価格:1,680円(税込、送料別)

「本が好き!」からの献本です。
豪華復刻本。それも漫画の「書評」なんて美味しすぎてニヤニヤ♪

一振りしたと見えた時は二振りしており、二振りしたと見えた時は三振りしている――霞の小太刀。

その見事な太刀筋は武芸者仲間で伝説化しつつある、今やなくなった幻の「霞の小太刀」。旅先で出会った用心棒に成り下がった武士から、そう教えられる。
気がついた時はがけの途中の木にひっかかっていた主人公。 5年経ても記憶は戻らず名前すら思い出せない主人公は、「殺し屋稼業」をしながら旅から旅を続け自分を知っている人間はいないかと探し歩いている。

そして、ふと懐かしさを覚えて衝動的に登った山で凍えかける。そんな主人公を暖かくもてなし暖をとった家で自分を知る者に出会うのだが――
そこにも救いはなかった。

今でいうと「ピカレスクロマン」というジャンルに入るのでしょうか。これを書いた70年代にはそんな言葉はまだなく、当時はかなり特殊な主人公設定だったのではないと思われます。

「天才は時代を先読みする」とよく言われますが、その言葉を地で行ってるな~と思いました。

「卑怯」「卑劣」「野卑」
――そんな言葉がお似合いの名前すらない主人公。悪党と呼ぶのもおこがましい「鼻にもかけられぬ嫌われ者」。闇に潜み目立ず「殺し屋」として生きるしか道がない、そんな一人の男を描いた作品です。

「血笑鴉」は「現代コミック」に2話掲載、その後「漫画アクション」に全18話が掲載。さらに「月刊少年チャンピオン」にも5話連載され、横山氏の中では「お気に入り」のキャラクターだったようです。

醜い姿ゆえに裏街道を歩むしかない主人公を描き、表の姿からはわからない人間の闇や業を切り出す作品としては「伊賀の影丸」や「仮面の忍者赤影」等数作ありましたが、この作品はその中でもかなり変わった主人公設定です。

大人のための時代劇マンガも(当時マンガは一部の子供の娯楽にすぎなかった)珍しいのに、アンチヒーローとしても異質な「血笑鴉」は学園紛争や三島由紀夫の自決、高度成長がピークの時代に生み出されました。

醜く無知、欲望には獣のように忠実。己の太刀以外には頼るものを持たぬ名も無き主人公。誰でもなく、自分の名すら持たず、常に「誰か」にとってかわれる存在。
ストーリは正義が常に勝つわけではなく、悪が大手を振って歩くこともあると暗示しており、社会の常識やあるべき姿の裏側を描いています。

全く古さを感じさせない、むしろ今ならよく見かけるアンチヒーロー「血笑鴉」。
何故この時代に描かれたのかがとても不思議。横山氏はきっと「人間に潜む本質」に昔から気がついていたのでしょう。

マンガのほうは、コマ割りが多少古臭さを感じさせるものの、線が滑らかで効果線や背景がお見事。この時代トーンはなかったようで3種類ぐらいをちょこっとしか使っていません。それなのにちゃんと「色感」にあふれる素晴らしさ。
今の漫画家志望者に「道具はなくてもマンガは描ける」教科書にもなるでしょう。

復刻本:血笑鴉:はなぎれ

ちなみにカラーページ、2カラーの色ページも再現されています。装飾用の「はなぎれ」までちゃんとついたとっても豪華なマンガ本。

「おれという男は生まれつき、悪行を背負って行きてるのかも知れねえなあ」
で締める第一巻。
それをきどっていうのではなく、醜い男がぼそりと言うからこそ、そのどうしようもない悲哀感がヒシヒシと伝わってきます。初雪の中に消えていく、全く救いのない一巻。

…続きが気になってしまうではないですか。
でもきっと報われない終わり方をするんだろうなぁ…

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やまね の紹介

偏った読書遍歴とそのレビュー。 コミックから専門書までなにからなにまで読みます。 書くのも読むのもやめられない。活字中毒をなんとかしてくれ! 乱読&積読仲間募集中!
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